「MGCクロニクル」 31・97ショットガン(MGC会長・故 神保勉氏追悼@その5)
2025年 02月 14日
J.R氏がMGC社・会長・故神保勉氏への追悼記事を
思いつくままにMGCモデルガンの事を徒然と書かれました。
今回は追悼シリーズの5回目、J.R氏の了承を得て転載させていただきます。
追悼クロニクルもこれで最後かな。

1975年初め頃に発売されたM31ショットガンは、凄かった。

ショットガンなんてモデルガンになるとは思ってなかった。
だいたい、これができるじゃないか。

「こうやるから退治ってんだよ。」
「ワイルド7」に登場した「暴動鎮圧銃」は、なんかもの凄い秘密兵器に思えた。射つと火炎放射器のようにバババッとタマが大量に飛び出し、近距離の相手をいっぺんに5,6人倒せるもの凄い銃だと描写されていた。
もちろん、単なる銃身の短いショットガンであり、細かいBB弾が発射直後に大きく広がって複数の敵を倒せるというだけなのだが、当時はそんな知識ないから、万能秘密兵器にさえ思えた。
たぶん、31を買った人たちの多くが、飛葉目当てだったんじゃないかと感じている。
シャッキーンというポンプ操作音、なんというか、甲高く響き渡る金属音が素晴らしかった。また、初めてのプラ製ショットシェルがカランカランと落ちる音も心震わせる。
このモデルガンほど、「操作音」が魅力のモデルガンはなかったと思う。

値段も10,000円を切るので、長物としては妥当なものだった。

平玉火薬を大量に入れすぎると、チャンバー(あ、チャンバーはないか)へ送り込んだ瞬間にドカンといってしまうこともあったが、実に楽しかった。
うれしさのあまり、カチャンカチャンと動かしていると、毎回押されるハンマーの側面が欠けてしまうのが欠点だったが、それは亜鉛合金だからしかたない。
だが、さらに驚きの新製品が出た。

ウインチェスターM97。
ハンマーが露出してカッコいい。確かにそれまでのハリウッド映画に、このハンマーが外についてるスマートなショットガンはよく出てきていて、なんとなくシルエットは知っていた。

前回紹介した1975年夏の「Visier」ニューモデル特集号に、実銃の分解図と共に新発売ニュースが掲載されている。

モデルガンの透視図を見ると、31でも採用されたチャンバーレス方式で設計されているのがわかった。
ワッフェンPPKやベレッタポケットで使われたチャンバーレス構造はかなり独特で、文字通りチャンバーが存在せず、空洞のブリーチ=ボルトの中にシェルが保持されている点にある。チャンバーの中に入ってないから、なんとか改造して実包でも詰めようもんなら、本来は安全にチャンバー内で圧力を抑えられている実包自体が、チャンバーがないおかげで炸裂してひどいことになる。
究極の安全設計であり、設計したタニコバさんの非凡さは賞賛に値する。
しかも、中身は実銃とは全く違うチャンバーレスでありながら、操作系は実銃とまったくおんなじである。

31と同様にシェルをフレームの下から装填し、フォアグリップを引くとフレーム内のキャリアが下がってシェルがフレーム内へ押し出されてくる。
フォアグリップを戻すと、キャリアがシェルをフレーム上へ押し上げてチャンバーへ送り込むかのように見えるが、実際はキャリアが上がっただけで、シェルはそのままフレームの中で保持されている。ここが素晴らしい設計の妙だ。見かけは実銃と同じだが、中身は違う動きをしている。でも、それは外からはまったくわからない。

トリガーを引けばハンマーが落ちてシェルを叩き、発火。実銃は長い撃針がシェルの雷管を叩くが、こいつはシェルがフレーム内部にとどまっており、ハンマーが叩いたファイアリングブロックが少し前進しただけでシェルを叩ける。
フォアグリップを引けば、疑似ボルト=実際は単なるカヴァーが後退して排莢口が開き、シェルがエジェクトされる。

しかも実銃のようにトリガーから指を離してハンマーが起きていると、ハンマーが固定されてフォアグリップは動かない。ただ、これだと不発の場合困るので、そのときはフレーム右側面のレリーズプランジャーを押してハンマーをフリーにしてフォアグリップを引けるようにする。

ほんと、よく考えたものである。トリガー周りは実銃に忠実に作って操作は同じにしながら、安全のためにチャンバーレスにし、操作性と安全性を完全に両立させたという点で、個人的には、タニコバ設計長物モデルガンの中でも熱意あふれる労作だと思う。

当時、この開発の苦心をタニコバさん自ら語るのを電話で聴くことができて、わたしは何回も電話かけてしまった。録音テープが流れるリカちゃん電話みたいなものである。
あ。誰もリカちゃん電話知らんのか。えっ ? 今もあるの ?
リカちゃん電話は当時タカラがよくやってたやり方で、指定された番号に電話すると「もしもし、わたしリカちゃんよ。」と答えてくれる。
もちろん健全な少女向けだから、「ふふふ、今何してるかわかる ? 」なんて言わない(当たり前だ)。
あたしはかけたことないが、GIジョー電話はかけたことある。

「よぅっし、みんな、突撃するぞ ! ダダダダダダ」とサウンドマシンガンの銃声が聞こえてきて、高くて買えない貧乏な少年たちを悶絶させた。
すまん、関係ない。

こんな素晴らしい出来のモデルガンが15,000円で売り出されたのだから、当時としても安いなあ、と思わせるものはあった。
複雑なメカに弱いわたしは、もう夢に出てくるほど、毎日97にクラクラしていた。
ああ、97がほすぃほすぃ。

もう、辛抱たまんねえっす。(今どき、やめなさい)

ほんとは東京メイクガン=TMGの広告見て、「うーん、また、駅前のばあさん(わたしを溺愛していた)に泣き落としして今度はコンバットマグナム2.5インチのステージガンで殿下になるぞー。」と思っていたが、いざ、ばあさんから2万円を強奪して東北本線に乗ると、ついつい赤羽で降りずに上野へ行き、「見るだけ」と思ってサーヴィスショップ寄ってしまった。
カウンターで97を手に取ったら、いきなり失神してしまい、気が付くと揺れる電車の中で長い97の箱を抱えてぼーっとしていた。

しばらくは毎日97ガッチャンガッチャンさせていて、左手が痛くなってしまったほどだ。

また、当時の健全な青少年たちの憧れローマン商会で真鍮製ショットシェルを買いこんだ。後撃針仕様にしてないので発火はできなかったが、真鍮のシェルを装填排莢するのは、また格別の楽しさで至上の快感だった。

わたしは、今でもこのメカニカルな外観が大好きである。
ハンマーが露出した、ちょっと古い感じと排莢口から見える複雑そうなボルトの雰囲気が好きなのだ。

現在流通しているタナカの97もいい出来だが、どうしてもプラスティックの質感は金属にかなわない。重さ、冷たさ、そして決定的な操作音。
フォアグリップを、ジャッキィーンと動かすときのあの金属音は、発売から50年経った今でも最高である。
1975年から1977年モデルガン第二次規制までのわずか2年間の販売だったが、わたしはMGC名作モデルガンのひとつとしたい。
