その頃、アメリカの親戚の家で武者修行をしていた、われわれおぢさん世代には憧れのガンマンだった現ウエスタンアームズ国本圭一社長が「Gun」誌に掲載した写真に、購入したミリポリの5インチモデルが映っていて、わたしはこのスタイルに一目ぼれしてしまい、ミリポリは5インチもええやん、と思うようになった。
数年後、六研と合併してウエスタンアームズ名義になった後、真鍮製でこのミリポリ5インチを発売したとき、そのスラリとしたスタイルに魅せられたおぢさんたちは多かったことだろう。だが、すぐに売り切れとなり、その高額な価格もあって、実物を見る機会は少なかった。

衝撃的だったのは、1975年(昭和50年)の夏に販売された
「Visiere 75/MGCニューモデル特集号」。
新製品の発表記事ばかりだったが、
プラパイソンやM97ショットガンを含む一連の記事の中で、
この記事は特別に飛び抜けていた。
当時の青少年たちを金槌50個分で頭を叩いたような衝撃が襲った。ミリタリー&ポリスを金属モデルガンの新製品として発売するという告知だった。
その美しい姿に、当時のガンマニア中高生たちはおしっこ漏らしそうにコーフンし、何度も何度もこのページの写真を見つめた。わたしはこのページを高校でこっそりコピーし、定期券入れに入れて毎日眺めていたくらいである。定期券に女の子の写真を入れないでミリポリの写真を入れていたなんて、青春真っただ中の健全な青少年ではない。単なる変態である。
後でタニコバ御大に聞いてわかったが、こいつは六研が企画商品としてMJQ・P38と共にMGCへ持ち込んだ真鍮製ミリポリだった。よくよく写真を見ると、六研/WAで一般に販売された鋳造フレームの量産品とはどう見ても違う代物だ。たぶん六研単独の頃に削り出した試作の原型モデルだったのではないかと思う。
でも。ここまでMGCは詳しく予告しながら、結局ミリポリを発売しなかった。このときの残念感、がっかり感は、当時の青少年に深い深いミリポリ傷を負わせたのは間違いない。「実物どおりのメカニズムで設計」というキャッチコピーにいたくヤラれたのに、発売されない。後のページに掲載されたジュリアーノ・ジェンマをモデルにしたミリポリのイラストも、広告やチラシになることはなかった。
その後、MGC以外のメーカーからも完全なミリポリのモデルガンは出なかった。国際産業だけがなぜかミリポリにこだわり、二代目三代目と金属モデルガンとして製作し、樹脂製でも作ったけれど、どれも一長一短。シリンダーが357サイズであったり、あちこち細部の造形がイマイチであったりした。ちなみに、伝説となっている感はあるウエスタンアームズのミリポリでさえ、シリンダーは357マグナムサイズであり、さらにフルートの造形が悪くて太すぎ、著しく外観を損ねている。バレルも短く、実物ハンマーとトリガーを使った内部以外、鋳造で製作されたフレーム・バレル、削り出しシリンダーの造形が今一つだった。これは当時としてはしかたのないことだったのだ。
21世紀になり、ガヴァメントやピースメーカーなどの代表的なモデルはこだわりの製品が揃い、それなりの足跡を残しているのに、肝心のダブルアクションリヴォルヴァーの代表格であるミリポリについて、完全なモデルは存在しないまま推移していた。
しかし。
ようやくミリポリの金属モデルガンが出たのである。44マグナムに続いて、亜鉛合金のモデルガンだ。ホビーフィックスからZEKEブランドで発売された。
S&W社が愛称をモデルナンバーにしてしまう前、
つまりM10ではなくPre-M10と呼ばれる、
第二次大戦後最初の再生産型1950年代のミリポリを忠実に。
そう、今までにない忠実さで再現しているのだ。
フレーム最上部には4番目の大きめなスクリュウがある。
トリガーガードの前面には5番目の
スクリュウもねじこまれている。
実銃のフロントサイトは当初に
半円形のオールドタイプだったが、
途中でランプサイトが追加されており、
今回はこの2種類のフロントサイトで
ミリポリをモデルアップしている。
スタイルは完璧だ。実銃を3Dスキャニングしているので、細部のラインに至るまで、忠実すぎるほど忠実だ。リヴォルヴァーでいちばん大事なシリンダーのフルートの長さ、幅も「完璧」だ。前述のようにあのウエスタンアームズの真鍮ミリポリでさえ、ここがダメだったが、今回のモデルは実銃そのままだ。現代の最新技術で甦ったミリポリ。

トリガーガードのライン。
前から見た時のヨークのライン。
これは機械加工で削って嵌合を合わせている。
そして、根元からくびれて、
スラッと伸びた銃身のライン。
ここはミリポリの命だ。
銃身は5インチ。ミリポリというと警察用の4インチが有名だが、率直に言って4インチは短すぎる。個人的には6インチが好きだが、いかんせん、長い。いちばんバランスが取れているのは、間違いなく5インチだ。今回も岩手のブルーイングGARAGEさんが丁寧に丁寧に心を込めて磨いてからめっきをかけているので、表面仕上げは美しい。
トリガーを引けば、作動も最高だ。S&Wアクション特有の滑らかさも再現されている。トリガーを引くとスッとハンマーが上がり、圧縮されたリーフスプリングを感じながら、でもコルトメカのようにギクシャク重くなることもなく、ハンマーは上がりきり、ストンと落ちる。大きめに作ったパーツを動かしながら微妙に削って調整し、このストンと落ちるところギリギリまで追い込んでいる。この安定したメカの要因は、シャシープレートだ。
あえて、フレームの中にサブシャーシを入れてそこへハンマーピンを立てている。これは、ピンと来る人はピンとくるが、亜鉛合金製モデルガンでは必要なことなのだ。 おぢさんたちは知っている。昔、名作と呼ばれたCMCの44マグナム。 確かに当時としては名作だったのだが、致命的な弱点があった。ハンマーピンが折れてしまうのだ。フレームと一体で鋳造されたハンマーピンが度重なるハンマーにかかる力に耐えかねて、ポキンと折れる。しかし、これが折れると、もうどうしようもない。素人では直しようがなかった。これを防ぐため、今回のミリポリではフレームを削り込んで板状の鉄製サブシャーシをあえて挿入し、ここに各パーツを立てているので、大変な剛性感を生んでいる。耐久力と共に作動に大変しっかりした安定感を加えてくれるのだ。動きも実にしなやかだ。もちろん、背後に隠れてフレームと一体になった薄い板なので気にはならない。
親指でハンマーを起こしても、当然シリンダーはゆっくりと、そして軽く回りシリンダーストップはカチンとシリンダーを止める。何回ダブルで空射ちしても、シングルで空射ちしても、ハンマーは同じように往復し、シリンダーは正確に1/6回転し、ハンマーノーズは虚空を打つ。ミリポリを握った右手を伸ばし、フロントサイトとリアサイトの溝を合わせ、トリガーを引き、シリンダーがカチッとホールドされたところで、さらにトリガーに力を加えれば、パチンとハンマーは落ちる。
サムピースを押してシリンダーを振り出しても、動きはいい。スチャッと振り出され、ガタはない。カタリともしない。
昔、「Gun」誌でイチローの知り合いの警官が「牛のクソがやることだ。」と罵っていたが、それでもわたしたちおぢさんは、「太陽にほえろ」で石原裕次郎演じるボスがハイパトでやっていたように、右手を振ってシリンダーをしまってしまう(これはほんとにやってはいけない)。
シリンダーはきれいに入る。カシャンとシリンダーは入るのだ。ハイパトのスカスカに軽いシリンダーはカートリッジを入れないとうまく入らなかったが、こいつの金属製シリンダーは気持ちよく収納される。
「ダーティーハリー」以降、50年もの間、日本を覆っていたマグナムリヴォルヴァーの呪縛。大きなフレームと大きなシリンダーがあふれていたモデルガン業界。細身で弱々しくさえ見えるミリポリが、ついぞ完璧なモデルとして世に出なかったのはより大口径、より強力という強迫的ともいえる思い込みに支配されていたせいだろう。しかし、どうだ、この優雅なスタイルは。Kフレーム。短い38スペシャルサイズのシリンダー。そして、スラリとした5インチの銃身。
胸が大きいから、お尻が大きいから、というだけではいかんのだ。歳を取ったおぢさんたちには、深窓の令嬢のような、抱けば折れてしまいそうな、か細いスタイルが愛おしいのである。
こいつを待っていたのは、確かにもおぢさんたちだけかもしれない。
でも、それでもいい。完璧な金属製ミリタリーポリス。
死ぬ前にそいつを握れるだけで、おぢさんたちは満足なのである。
高い ? 当たり前である。
イチから金型作って、伝統ある元MGCの東芝製鋳造機械の
現存するダイカスト工場に頼み込んで鋳造してもらい・・・。
出てきたランナー付きのパーツを全部きれいにバリ取りして仕上げ、ねじ穴などを自社内で連日徹夜で加工。岩手のブルーイングGARAGEさんに磨いてもらい、ようやく各パーツはできあがる。その後も、昔みたいに社員総出で組み立てているわけではない。ましてやパートのおばさんたちをズラッと並べて流れ作業で組み立てられるような大企業ではない。社長自ら、老眼を押して拡大鏡を頭につけて、うんうん言いながら一人で組み立てている。
20世紀のモデルガン業界のように、1ロット数百挺単位で作り、数千挺、数万挺販売していた時代とは違う。21世紀は娯楽が増え、モデルガン自体を触りたいと思う人たちが激減している中、ごくごく限られた人たちだけのために、この金属モデルガンは作られている。恐らく200挺までは届かないだろう。なにしろ、金めっきの歩留まりが悪く、せっかく磨いたパーツの半分近くが使えない出来になっているからだ。依頼したパーツがすべてきれいにめっきできるわけではない。
好きでなければできない仕事だ。冷静に採算考えたらどこも手を出さない。こんなモデルガンバカの社長がいるから今どき新企画・新規金型で製作された亜鉛金属モデルガンの新製品が発売されるのである。
高い値段をつけて、会社でボッて儲けてるんだろうと疑うひとは買わなくていい。今回製造できたモデルが全部売れたとしても、社長はいきなりベンツのEクラスを乗り回したりなんかできやしない。いつもと同様、国産ハイブリッド車を乗り回して、あちこちの外注会社を駆けずり回り、冷えた日替わり弁当をかっこんで、早くこのミリポリを好きな人たち、欲しい人たちに届けたいと思って仕事をしている。唯一の楽しみは、未だ誰も持っていない試作モデルガンを誰よりも早く手にして、カチャンカチャンと空射ちしている瞬間だ。日本で初めてちゃんとしたミリポリの金属モデルガンを手にする喜び。この思いをミリポリを待っていた人たちと共有できればいい。
このモデルガンは、本当にミリポリを欲しいと思う人だけが手にすればいい。そして、これ以上完璧なモデルガン、そう、亜鉛合金製の完璧なモデルガンは絶対にできない。あえて挑戦するメーカーは、もういない。その点を理解した人だけが、この金属モデルガンを手にすることができる。
メジャーな雑誌に無視され続けても、そんなことはかまわない。広告出せば提灯記事を書く専門誌、言葉を替えれば広告出さないと記事にもしない雑誌に紹介記事が載ることもなく、ごく一部の人たちの間だけでこのモデルガンは売り切れていくだろう。
値段が高いのは先に述べたような事情で、もうしかたない。値段が高いのには理由があり、事情がある。ただ、それでも、この正しい金属モデルガンは売れていく。数は少ないが、正しい道を歩んでいる、志の高い金属モデルガンだ。
1960年前後に生まれた日本の金属モデルガンシリーズの、恐らく最期を飾るモデル。それがこのミリタリーポリスに続くKフレームのシリーズだ。
1975年の、あの夏の日。
「Visiere」ニューモデル特集号に掲載されただけで終わった
「実物どおりのメカニズムで設計」という言葉が、
45年後の今、ようやく形になったのだ。
「Visiere」でジェンマが構えていたミリポリを、
今、手にすることができた。
しみじみと、しあわせだと思う。
追記、
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2021年12月27日付けでの承り証メールをお送りしなかった方々につきましては、
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